2021.04.27

"ダスト集合体の物質強度で探る太陽系小天体形成過程"

辰馬未沙子(東京大学/国立天文台)

Abstract:
太陽系小天体の形成過程は直接付着成長やペブル集積、不安定性など諸説ある。この形成
過程を探るため、我々はその物質強度に着目した。数百mを超える大きさの天体の内部密度
は自己重力と圧縮強度のつりあいで決まると考えられている。本研究ではミクロンサイズ
のダストの集合体の圧縮強度をダスト付着N体計算で求めた。その結果、氷ダスト集合体と
シリケイトダスト集合体について、体積充填率0.1以下から高密度まで、圧縮強度を連続的
に求めることに成功した。さらに、ダスト集合体の自己重力と圧縮強度がつりあうと仮定
して内部密度構造を求め、実際の天体の内部平均密度と比較した。その結果、太陽系外縁
天体(TNOs)は氷とシリケイトのダスト集合体で説明できることがわかった。一方、
67P/Churyumov-Gerasimenkoを含む彗星は構成粒子半径が0.1μmの典型的なダスト
集合体では説明できず、その半径を大きくしなければ説明できないことがわかった。
さらに、小惑星リュウグウや小惑星イトカワ、小惑星ベンヌの密度は、本研究のような
ダスト集合体では説明できないほど高密度であることがわかった。このような高密度な
天体を形成するには、まず数十km以上の大きさの天体を形成する必要がある。すなわち、
リュウグウやイトカワ、ベンヌは破片の集合体であり、その母天体の大きさは数十km以上
であることを確認した。