2022.02.15
"すばる広報ライブカメラによる、新流星群の出現同定"
田中壱
Abstract:
ハワイ・マウナケアの山頂に昨年設置された「すばる-朝日星空カメラ」は、
YouTube Liveというプラットホームを用いて、昨年4月からマウナケアの夜空の
姿を地元と世界中に毎日届けている。高い晴天率と世界最高レベルの観測条件の
おかげで、ほぼ毎晩、平時でも数百個の流星の姿を捉える事ができる。
ISO409600という高感度のカメラは通常の眼視観測の限界を超える6等以下の
流星まで高S/Nで捉える事ができており、検出の再現性・客観性も備えたこの
データは定常的な流星観測にも高いポテンシャルを有する。
このカメラデータのサイエンスデモとして、2021年に出現が予報された、15P/
Finlay彗星による「新」流星群の検出を試みた。この新流星群は、15P/Finlayが
2014年暮れに回帰した際に起こしたアウトバースト起源のダストが地球軌道に
入り込む事で、2021年の回帰に合わせて発生すると、日本の佐藤幹哉氏を始めと
する複数の研究者が予報していたものである。
ピーク出現予報時刻の10月7日UT1時AMはハワイでは日中になるが、活動レベル
によっては夕方の空にその残存成分を検出できるかもしれない、という事で、
10月6日から8日の3日間の夕方時間帯のデータを使って、さいだん座方向から
飛来する暗い流星数を評価した。評価のボランティアを配信チャンネル経由で
募集し、7人のボランティアの方々により初期評価をして頂いた。その後、集計を
元にした画像データをさらに田中と佐藤氏によりチェックする事で、最終的な
群流星の判定をした。
評価の結果、極めて明瞭な流星群の増加を定量的に捉える事に成功した。前後の
観測日における散在流星数との相対比較では、当日の流星増加は8σレベルに達し、
暗い流星が顕著に増加している事を明瞭に示す事ができた。興味深い事に、この
時間の日本での電波観測では我々の検出した暗い流星の増加に対応するシグナルは
検出できておらず、相補的な観測データとしても極めて有用なものと考えている。